SEOについて調べていると、BtoBとBtoCではやり方が違う、という解説をよく見かけます。たしかに、企業を相手にする商売と消費者を相手にする商売では、お客様の動き方が異なります。ではSEOも、まったく別物として考えなければいけないのでしょうか。
この記事では、まず世間で言われている違いを整理します。そのうえで、実際のところ何が違って何が同じなのかを、実務の視点からお伝えします。
BtoBとBtoCとは
はじめに言葉の整理をしておきます。
BtoBはBusiness to Businessの略で、企業が企業に対して商品やサービスを販売する取引のことです。部品メーカー、業務システム、法人向けのコンサルティングなどが当てはまります。
BtoCはBusiness to Consumerの略で、企業が一般消費者に対して販売する取引のことです。小売、飲食、美容室などが典型です。
定義はシンプルですが、実態はそれほど綺麗に分かれません。たとえば工務店は、施主である個人を相手にすればBtoCですが、法人の建築案件も受けていれば両方です。中小企業では、このように両方の顔を持つケースが珍しくありません。
まずこの前提を押さえたうえで、世間で言われている違いを見ていきましょう。
BtoBとBtoCでSEOはどう違うと言われているのか
BtoBとBtoCのSEOの違いは、おおむね4つの軸で語られることが多いです。順に見ていきます。
1. 検索する人と意思決定の違い
BtoBの検索者は、仕事として調べている担当者です。買うのは自分のお金ではなく会社のお金。上司や決裁者を説得する材料を探しています。
関与する人が複数いて、検討期間は数か月から1年に及ぶこともあります。
一方BtoCの検索者は、自分のために調べている本人です。感情や衝動も購買に影響し、検索から購入までの期間が短い傾向があります。
2. SEOの目的の違い
BtoCでは、検索から購入まで一直線につながることが多いです。ECサイトであれば、検索して商品ページを見て、そのまま購入して完結します。SEOのゴールは購入そのものです。
BtoBでは、検索していきなり契約に至ることはまずありません。そこでゴールを手前に置きます。資料請求、問い合わせ、セミナー申込などです。
これがいわゆるリード獲得で、見込み客の連絡先を得たあとは、営業やメールで関係を深めていく役割分担になります。
3. キーワードの性質の違い
BtoBのキーワードは検索ボリュームが小さい傾向があります。専門用語や業務課題ベースの言葉なので、月間数十回から数百回ということも珍しくありません。ただし検索する人の確度が高く、1件あたりの取引金額が大きいため、少ないボリュームでも十分に成果につながるとされます。
一方BtoCには、月間数万回を超える大きなキーワードが存在し、母数で勝負できます。そのぶん競合も多く、1件あたりの単価は小さくなりがちです。
4. 計測のしやすさの違い
BtoCは、検索から購入までを同じ人が行うため、効果を数字で追いやすいです。
BtoBは、担当者が検索して記事を読み、社内で共有され、最後は決裁者が会社名で検索し直したり、URLを直接開いたりします。途中で人が変わるため、アクセス解析では追跡が切れてしまいます。
SEOが貢献していても、数字の上ではそう見えないのです。BtoBのSEOには、そういう宿命があると言われます。
ここまでが通説です。まとめると、BtoBは少数、高単価、長期戦、多人数。BtoCは大量、低単価、短期、1人。
こういう対比で語られることが多いのです。
本当の分かれ目は商材の性質
さて、この通説は大枠としては妥当です。ただ、自社に当てはめる前に一度立ち止まってほしいところがあります。
たとえば住宅やリフォームを考えてみます。相手は個人なのでBtoCです。
しかし検索していきなり契約する人はいません。資料請求や見学会を挟み、家族で相談し、何か月もかけて決めます。
転職サービスも保険も同じです。登録や相談という段階を挟み、検討期間は長い。構造としては、通説で言うBtoB型そのものです。
キーワードのボリュームも同様です。BtoCでも、地域名を組み合わせた商圏ビジネスのキーワードは月間数十回ということがよくあります。
逆にBtoBでも、勤怠管理システムのように市場の広い商材なら、月間数千回を超えるキーワードがあります。ボリュームの大小を決めているのは、BtoBかBtoCかではなく、市場の広さや商圏の範囲です。
つまり、通説の4軸が本当に対比しているのは、BtoBとBtoCではありません。
検索から購入まで一足飛びに行ける商材か、途中に検討や相談の段階を挟む商材か。市場が広い商材か、狭い商材か。こうした商材の性質です。
BtoBには検討型が多く、BtoCには即決型が多い。その傾向があるから、BtoBとBtoCの違いとして語られているにすぎません。
冒頭で触れたとおり、中小企業ではBtoBとBtoCが混在していることも多いです。自社はどちらだろうと分類に悩むより、自社の商材はどういう性質かを見るほうが、現場の判断に役立ちます。
それでも変わらない本質
では、商材の性質によってSEOの本質まで変わるのかというと、変わりません。
どんな商材でも、画面の先には必ず一人の人間がいます。何かのニーズを持って、検索窓に言葉を打ち込んでいる。
BtoBの担当者も、会社の課題を背負ってはいますが、検索している瞬間は一人の人間です。失敗したくない、上司にきちんと説明したい。そういう個人の思いを持って検索しています。
だから、やることの中心も変わりません。実際に検索窓に打ち込まれているキーワードとその検索ボリュームを主軸に据えて、検索した人の悩みに答えるページを用意していく。この進め方はBtoBでもBtoCでも同じです。
そのうえで、キーワードのデータを解釈するときに効いてくるのが、お客様の生の声です。商談で繰り返し受ける質問、接客中の何気ない会話、問い合わせの文面。こうした声は、どのキーワードが自社にとって重要かを見極める判断材料になります。
記録として残していなくても構いません。社長や現場の方に「お客様によく聞かれることは何ですか」と尋ねれば、生の声はちゃんと出てきます。
声をどこから拾うかは商売の形によって変わります。法人相手なら商談の場、消費者相手なら口コミや接客の場。供給源は違っても、データを主軸に、生の声で確度を見極めるという組み立ては共通です。
BtoBで特に意識したいこと3つ
本質は同じでも、法人相手の商売でSEOに取り組むなら、特に意識しておきたいことが3つあります。
1. ボリュームがなくても作るページがある
先ほど、検索ボリュームを主軸にすると述べました。ただし、ボリュームは判断材料の1つであって、絶対の基準ではありません。例外が2つあります。
1つは、お客様の声から見つかるテーマです。検索データにはほとんど現れないのに、商談では毎回のように聞かれる。そういう悩みには、ボリュームに関係なく答えるページを作る価値があります。
もう1つは、事業の急所となるキーワードです。月間の検索数がゼロに近くても、この言葉で検索されたら絶対に自社が表示されるべきだ、というキーワードがあります。
ニッチな法人向けビジネスでは、重要なキーワードほどボリュームがない、ということも起こります。数字の大小ではなく、事業との関連の深さで判断してください。
2. 読者の後ろにいる決裁者を意識する
法人相手の場合、ページを読んでいる担当者が、最終的に決める人ではないことが多いです。担当者は情報を集めて、上司や関係部署に説明します。つまりあなたのページは、検索した本人を納得させるだけでなく、その人が社内で説明するのを助ける道具にもなります。
といっても、大がかりな資料を用意する話ではありません。
料金や対応範囲をページに明記しておく。よくある質問に答えておく。導入事例を1本書いておく。
こうした素朴な形で十分です。担当者が上司に説明しやすい状態にしておく。その意識があるだけで、ページの書き方は変わってきます。
3. SEOに期待する役割を広く捉える
法人相手の中小企業では、新規のお客様の入り口が紹介や既存のお付き合いで占められていることが多いです。検索経由の新規がもともと少ないなら、SEOを集客装置としてだけ見ると、分が悪く感じられるかもしれません。
効果の確認にも時間がかかります。取り組む前に迷いがあるなら、メリットとデメリットの両面から確かめてください。
しかし、検索に向けてサイトを整えることには、集客以外の役割があります。
まず、指名検索の受け皿です。
紹介や営業で接触した相手は、契約前にほぼ必ず会社名で検索します。そこで情報の薄いサイトが出てくれば、不安を与えてしまいます。逆に、事業内容や実績がきちんと伝わるサイトは、最後のひと押しになります。
次に、営業資料の代わりです。商談のあとに「詳しくはこのページをご覧ください」と送れるページがあれば、サイトが説明を肩代わりしてくれます。
近年増えているのが、ChatGPTのような生成AIが回答の参照元としてWebサイトを使う場面です。検索エンジンに正しく理解されるよう整えたサイトは、AI経由でも見つけてもらいやすくなります。これはSEOの延長線上にある新しい価値です。
加えて、採用に取り組んでいる企業なら、求職者が応募前に検索することも見逃せません。事業内容の分かるサイトは、採用にも効いてきます。
店舗型ならMEOが先になることも
ここまでBtoB寄りの話をしてきましたが、消費者相手側の話も1つ、最後に補足しておきます。
消費者相手の商売、特に飲食店や美容室のような店舗型ビジネスでは、検索結果の一番目立つ場所が地図の枠(ローカル検索結果)に取られていることが多いです。この場合、通常のSEOに取り組む前に、Googleビジネスプロフィールを整えて地図枠での上位表示を狙うMEOのほうが優先になります。
つまり、BtoBとBtoCの違いとして語られることの一部は、実は地図の枠が表示される商圏ビジネスかどうかの違いとして現れています。店舗型の方は、何をどの順で設定するかを確かめて、MEOから着手することをおすすめします。
まとめ
BtoBとBtoCのSEOについて、通説と実態を整理してきました。
- 通説の4軸は、大枠の傾向としては妥当
- ただし本当の分かれ目はBtoBかBtoCかではなく、商材の性質
- 消費者相手でも、検討を挟む商材ならBtoB型の構造になる
- 画面の先に一人の検索者がいるという本質は、どちらも同じ
- 主軸は検索データ、お客様の生の声は確度を見極める判断材料
- 法人相手なら、ボリューム例外、決裁者の存在、期待値の持ち方を意識する
自社はBtoBだから、BtoCだからと分類から入るのではなく、自社の商材を検索する人は誰で、何を求めているのか。そこから考えれば、進む道は自然と見えてきます。

