SEOに取り組むと、必ずキーワード選定という工程に出会います。狙うキーワードを決めましょう、と多くの解説に書かれています。
しかし、いざやろうとすると手が止まります。何を基準に選べばいいのか。そもそもキーワードを選ぶとは、何をしていることなのか。
この記事では、キーワード選定とは何かという考え方から、実務でどう進めるかという手順までを、支援の現場で実際に使っている流れに沿って解説します。読み終えたとき、自社が取り組むべきキーワードの一覧と、その優先順位を自分で作れる状態になることがゴールです。
SEOの全体像から確かめたい方は、先にそちらを押さえておくと位置づけがつかめます。
キーワードとは何か
手順に入る前に、キーワードとは何かを押さえておきます。ここの理解が、この後のすべての判断の土台になるからです。
キーワードとは、検索する人が検索窓に打ち込む言葉のことです。SEOの文脈では、どの検索に対して自社のページを表示させたいかを決める単位として使われます。コンテンツのテーマやお題を決めるもの、と言い換えてもよいでしょう。
世の中の解説の多くは、この捉え方で書かれています。
ただ、この捉え方だけでは半分です。もう一段深く見てみましょう。
人はなぜ検索するのでしょうか。何かに悩んでいる、知りたいことがある、やりたいことがある。そうしたニーズが何もない状態で、検索窓に文字を打ち込む人はいません。
つまり、検索という行動が発生している時点で、その裏には必ず何かしらのニーズが存在しています。
キーワードとは、そのニーズが数語に圧縮されたものです。ツールに並ぶキーワードの一覧は、言葉のリストに見えて、実際には世の中に実在するニーズの一覧なのです。キーワードは、ニーズの存在証明だといえます。
この捉え方に立つと、キーワード選定という行為の意味も変わってきます。表向きはコンテンツのテーマ決めですが、その実態は、世の中にある無数の悩みのうち、どの悩みに自社が応えるかを決める行為です。
テーマを選んでいるようで、実は応える相手を選んでいる。キーワード選定がSEOの中心工程だと言われるのは、このためです。
キーワード選定の全体像
考え方を押さえたところで、実務の手順に入ります。この記事で示す流れは次の5つです。
- Search Consoleで現状を見る
- 生成AIで種となる言葉を出す
- ラッコキーワードで候補を広げる
- 事業の目で絞り込む
- 検索ボリュームを確認し、優先順位をつける
キーワード選定のゴールは、自社が応えるキーワードの一覧に優先順位がついた状態をつくることです。その先の、選んだキーワードで実際に上位表示を目指すページ作りは、選定とは別の工程になります。この記事では、一覧と優先順位を作るところまでを扱います。
では、順に見ていきます。
手順1:Search Consoleで現状を見る
最初に開くのは、キーワードツールではなくGoogle Search Console(サーチコンソール)です。
Search Consoleの検索パフォーマンスを見ると、自社サイトがいまどんな検索語で表示され、クリックされているかが一覧でわかります。つまり、世の中のニーズと自社サイトがすでに接点を持っている場所が、実データとして見えるのです。
想像や願望ではなく、実際に起きている検索から出発できる。これが最初にSearch Consoleを見る理由です。
多くの場合、最初に目にするのは社名やサービス名での検索が中心、という光景です。それでも構いません。
中には、思いもよらない言葉で表示されているページが見つかることがあります。それは、自社がまだ気づいていないニーズとの接点であり、この後の洗い出しの貴重な手がかりになります。
ただし、Search Consoleには限界があります。ここに映るのは、すでに自社が検索結果に表示されている検索だけです。
世の中にニーズはあるのに、自社がまだ届いていない検索は、ここには一切映りません。鏡に映る範囲しか見えない、ということです。
では、鏡に映らないニーズはどうやって見つけるのか。それが次の手順です。
公式サイト:Google Search Console
手順2:生成AIで種となる言葉を出す
鏡の外側を探す道具の代表が、サジェストキーワード(検索窓に出てくる候補)を一括取得できるツールです。ただ、その前に1つ挟みたい工程があります。
サジェスト系のツールは、種となる言葉を1つ入力すると、そこから数百件の候補を広げてくれます。裏を返すと、種になる言葉は自分で用意しなければなりません。
実は、SEOに慣れていない事業者がつまずくのは、まさにここです。自社の事業に関係する検索の切り口が、そもそも思いつかない。ツールの手前で手が止まってしまうのです。
そこで使えるのが、ChatGPTをはじめとする生成AIです。自社のWebサイトを読み取ってもらい、どんな悩みを持つ人に検索されそうか、種になる言葉は何かを挙げてもらいます。次のようなプロンプト(AIへの指示文)をそのまま使ってください。
キーワード選定を手伝ってください。
以下は当社のWebサイトです。
【サイトURL】
このサイトから事業内容を読み取った上で、次のことを教えてください。
1. この事業はどんな悩みやニーズを持つ人に検索されそうか
2. その人たちが検索窓に打ち込みそうな言葉の候補
3. サジェストツールでキーワードを広げるときの元になる言葉を10個ほど
1つ注意があります。生成AIが出してくれるのは、あくまで発想の候補です。その言葉が実際に検索されているか、月に何回検索されているかというデータは、通常の設定のAIは持っていません。
実在する検索の確認と測定は、この後のツールの仕事です。発想はAI、実データはツール、と役割を分けて使います。
手順3:ラッコキーワードで候補を広げる
種となる言葉が揃ったら、ラッコキーワードに入れて候補を広げます。
ラッコキーワードは、言葉を1つ入力すると、それに関連するサジェストキーワードを一括で取得してくれるツールです。サジェストは、実際に検索されている言葉から生成されるものなので、ここで得られる候補は、実在する検索の一覧です。AIが出した発想の種が、ここで実データに変わります。
種を1つずつ入れていくと、手元には数百件のキーワード候補が並ぶはずです。自分では想像もしなかった検索の言葉に、たくさん出会うと思います。世の中にどんなニーズが存在しているのかを知る、という意味でも、この工程には価値があります。
なお、ラッコキーワードの無料プランでは、キーワードの月間検索数(検索ボリューム)は取得できません。ここで得られるのは候補の一覧までで、どれくらい検索されているかを測るのは、手順5の仕事になります。
公式サイト:ラッコキーワード
手順4:事業の目で絞り込む
数百件に広がった候補を、今度は絞り込みます。この工程だけは、ツールにもAIにも代替できません。
サジェストで集めた候補には、自社の事業と関係のないものが必ず混ざります。同じ言葉でも別の業界の検索だったり、自社が応えられない悩みだったりします。
これを見分ける基準は1つです。この検索に応えることが、自社の受注や問い合わせにつながるか。
この判断ができるのは、その事業をやっている本人だけです。支援者やコンサルタントは、事業内容やサービス内容から、どのキーワードが合いそうかを予測したり提案したりはできます。
しかし、ニッチな業界であるほど、この言葉はうちのテーマだ、これは違う、という肌感覚を持っているのは現場の事業者です。ここは外注する工程ではなく、事業者の腕の見せどころだと考えてください。
絞り込みのコツを1つ挙げるなら、迷ったら残すことです。まだキーワードへの理解が浅い段階で思い切って絞り込んでしまうと、よくわからないまま対象を狭めることになります。関係ないと言い切れるものだけを外し、判断がつかないものは次の手順に持ち越して構いません。
もう1つ、絞り込みの際に注意したいのが、自社の社内用語です。日頃使い慣れた言葉で候補を探すと、検索ボリュームがほとんどないという結果になることがあります。
これは、その言葉で検索する人がいないことを意味しているのではなく、顧客が別の言い回しで検索している可能性を示しています。実際、顧客からの問い合わせや商談で聞く言葉には、社内では使わない表現がよく混ざっています。
社内用語だからと切り捨てず、顧客が使う言い回しの候補が別にないかを確認し、あれば顧客の言葉のほうを優先してください。なお、顧客が法人か消費者かで生の声の拾い先が変わる点は、法人相手と消費者相手の違いで扱っています。
手順5:検索ボリュームを確認し、優先順位をつける
絞り込んだ候補に、今度は検索ボリューム(月間の検索数)という物差しを当てて、優先順位をつけます。
検索ボリュームの測定には、ネコノテツールが使えます。会員登録もログインも不要で、一度に最大20キーワードまでの月間検索ボリュームを一括で調べられます。絞り込んだ候補をまとめて入れて、どれがどのくらい検索されているかを一覧にしていきます。
ここまでに登場した道具は、始める段階で使える無料ツールとしてまとめています。
数字が出たら、優先順位づけです。判断の考え方は次の通りです。
第一の基準は、あくまで事業との関連度です。どれだけボリュームが大きくても、受注や問い合わせにつながらないキーワードに取り組む意味はありません。
そのうえで、関連度が同じくらいであれば、ボリュームが大きいほうが、上位表示できたときのインパクトは大きくなります。逆に、事業にぴったり合っていても、ほとんど検索されていないなら、優先度は下げざるを得ません。ボリュームは、関連度で選んだ候補に順番をつけるための物差しです。
ここで1つ、注意しておきたいことがあります。ボリュームの大きいキーワード、いわゆるビッグキーワードから狙うのは避けてください。
ビッグキーワードは需要が大きいぶん競合も強く、上位は激戦です。加えて、1語の大きな言葉は検索する人の意図も幅広く、何に応えればよいのかが定まりません。
狙うべきは、複数の言葉を掛け合わせた、ニッチだが検索意図が明確なキーワードです。ロングテールキーワードと呼ばれます。数字は小さくても、検索する人の悩みがはっきりしているので、応えるページも作りやすい。
これからSEOを本格的に始めていく、まだ検索流入を十分に取り切れていないサイトもあるでしょう。そうした場合は、まずはこうしたロングテールキーワードから着手し、実績を積みながら少しずつ大きなキーワードへと広げていくことをおすすめします。
なお、慣れているコンサルタントは、関連度・ボリューム・競合の強さといった複数の指標を同時に見ながら一気に絞り込みます。ただ、初めての人が複数の指標を同時に扱うと、判断が止まりがちです。
まず事業の目だけで絞り、その後にボリュームで順番をつける。1回に見る物差しを1つにする。この記事で工程を分けているのは、そのためです。
公式サイト:ネコノテツール(検索ボリューム調査ツール)
キーワード選定はここまで。この先は別の工程
手順5まで進むと、手元には、自社が応えるべきキーワードの一覧が、優先順位つきで並んでいるはずです。キーワード選定という工程は、ここで完了です。
この先にあるのは、優先順位の高いキーワードから順に、実際に検索結果を見て勝ち目や検索意図を確かめ、そのキーワードに応えるページを用意していく工程です。それは選定ではなく、個別ページの対策という別の仕事になります。
記事で応えると決めたなら、キーワードが決まってからの書き方へ進んでください。まずは、この記事の範囲である一覧と優先順位を、自分の手で作ってみてください。
まとめ
キーワード選定の考え方と実務手順を見てきました。要点を振り返ります。
- キーワードは、世の中に実在するニーズの存在証明
- キーワード選定とは、テーマ決めであり、どの悩みに応えるかを決める行為
- 手順は5つ。起点はSearch Console、種出しはAI、拡張はラッコキーワード
- 絞り込みは事業の目で判断。ツールにもAIにも代替できない工程
- 優先順位は関連度が第一。ボリュームは物差し、狙うのはロングテール
キーワード選定は、ツールの数字を眺める作業ではなく、自社がどんな悩みに応える会社なのかを検索の世界で決める作業です。だからこそ、一番大事な判断は事業者にしかできません。道具とAIの力を借りながら、自社の応えるべきニーズの一覧を、ぜひ自分の手で作ってみてください。

